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【前編】人手不足時代、物流はAIでどう変わる?― 物流現場で進むAI活用の現在地 ―

9 時間前
読了時間: 5分

物流業界では現在、人手不足やドライバーの高齢化、燃料費・人件費の上昇、多頻度・小口配送への対応など、さまざまな課題が顕在化しています。さらに、時間外労働の上限規制への対応や物流効率化法に基づく取組など、限られた人員・車両・時間の中で、より効率的な物流体制を構築することが企業に求められています。

こうした状況の中、注目されているのがAI(人工知能)の活用です。

AIというと、「人の仕事を機械に置き換えるもの」というイメージを持たれることもあります。しかし、現在の物流分野におけるAIの重要な役割は、それだけではありません。蓄積された物流データを分析し、需要を予測し、より適切な配車や在庫配置などを支援することで、人が行ってきた判断を高度化する技術として活用が進んでいます。


■ 需要を予測し、物流を事前に準備する

代表的な活用分野が「需要予測」です。

これまでも企業では、前年の販売実績や季節変動、担当者の経験などをもとに需要を予測してきました。AIを活用すると、過去の受注・出荷実績に加え、曜日、季節、天候、販売動向など、多くの情報から需要や物量を予測することが可能になります。

需要予測の精度が高まれば、「どの商品を、いつ、どれだけ準備するのか」という在庫管理だけでなく、必要となる倉庫人員や車両、配送能力なども事前に計画しやすくなります。

これは単なる在庫削減ではありません。過剰在庫を抑える一方、欠品や緊急輸送を減らすことで、サプライチェーン全体で無駄な物流を発生させない仕組みづくりにつながります。


■ AIによる配車・配送ルートの最適化

物流現場で特に効果が期待される分野の一つが、配車や配送ルートの最適化です。

実際の配車では、配送先、納品時間、積載量、車両の種類、走行距離、道路状況、ドライバーの勤務時間など、数多くの条件を考慮する必要があります。配送先や車両数が増えるほど組み合わせは複雑になり、担当者の経験だけで最適な計画を立てることは容易ではありません。

AIや数理最適化技術を活用することで、こうした多数の条件を踏まえながら、車両への荷物の割当てや配送順序などを効率的に算出できるようになります。

その結果、走行距離の短縮、積載率の向上、使用車両数の適正化、配車業務の省力化、ドライバーの労働時間削減などにつながることが期待されます。


■ 倉庫作業にも広がるAI活用

AIの活用は輸配送だけではありません。物流センターや倉庫においても導入が進んでいます。

例えば、商品の出荷頻度を分析して保管場所を見直したり、翌日の出荷量を予測して必要な作業人員を配置したりすることが考えられます。

さらに、WMS(倉庫管理システム)、自動倉庫、AMR(自律走行搬送ロボット)などとAIを組み合わせることで、入庫、保管、ピッキング、搬送、仕分け、出庫といった一連の物流工程を効率化する取組も進められています。

画像認識AIも重要な技術です。カメラで取得した画像から商品の種類や数量、ラベルなどを確認することで、検品や仕分け、誤出荷防止などへの活用が期待できます。


■ 「異常が起きてから」から「起きる前に」へ

AIの大きな特徴の一つが、大量のデータから一定の傾向や兆候を見つけ出せることです。

物流分野でも、過去の輸送実績、交通状況、天候、在庫状況、設備の稼働データなどを分析することで、配送遅延や在庫不足、設備トラブルなどのリスクを早期に把握する活用が進んでいます。

従来の物流管理では、問題が発生してから担当者が対応する場面も少なくありませんでした。AIを活用することで、将来的には「異常が発生してから対応する物流」から、異常の兆候を捉え、先回りして対応する物流への転換が期待されています。


■ 生成AIは物流の「間接業務」にも活用できる

近年急速に普及している生成AIも、物流効率化に新たな可能性をもたらしています。

物流現場には、輸配送や荷役だけでなく、日報作成、問い合わせ対応、配送トラブルの報告、作業マニュアル作成、会議資料作成、物流データの集計・分析など、多くの間接業務があります。

生成AIを適切に活用することで、こうした業務に要する時間を短縮し、担当者が配車調整、顧客対応、現場改善など、より重要な業務に時間を振り向けることが可能になります。


■ AI導入の目的は「AIを使うこと」ではない

物流分野におけるAI活用で重要なのは、AIそのものを導入することを目的にしないことです。

まず自社の物流工程を把握し、「どこに待ち時間があるのか」「なぜ積載率が上がらないのか」「どの業務に人手がかかっているのか」「どの判断が特定の担当者の経験に依存しているのか」といった課題を明確にする必要があります。

そのうえで、AI、物流システム、自動化設備などを適切に組み合わせることが重要です。

「人の経験」から「データに基づく判断」へ。「問題発生後の対応」から「予測に基づく事前対応」へ。

現在のAIは、物流のあり方をこのように変え始めています。

そして今後、AI技術がさらに進化すれば、単に人の判断を支援するだけではなく、AIが状況を把握し、自ら物流計画を見直す段階へ進む可能性があります。

後編では、AIエージェント、自動運転、物流ロボット、デジタルツインなどの技術進展を踏まえながら「AIによって物流はこれからどのように変わっていくのか」について考えていきます。

 
 
 

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