【後編】人手不足時代、物流はAIでどう変わる?― AI技術の進展で変わる物流の未来 ―

前編では、需要予測、配車・配送ルートの最適化、倉庫作業、画像認識など、すでに物流現場で進んでいるAI活用について紹介しました。
では、AI技術がさらに進歩すると、物流はどのように変わっていくのでしょうか。
今後の大きな方向性の一つが、「人が判断するための情報を提供するAI」から「AIが状況を認識し、対応を計画するAI」への進化です。
その代表が「Agentic AI(AIエージェント)」です。例えば、大雨や事故による道路状況の変化をAIが検知し、配送への影響を予測したうえで、代替ルートや車両、配送順序を再計算する。さらに、倉庫側の出荷計画まで連動して変更するといった活用が考えられます。
人が一つひとつ条件を確認して判断していた物流から、AIが変化を捉え、対応案を組み立てる物流へと発展していく可能性があります。
■ 物流全体をリアルタイムで最適化する
現在は、在庫管理、倉庫管理、配車、輸配送など、それぞれの業務で個別にシステムやAIが活用されるケースが多くみられます。
今後は、WMS(倉庫管理システム)、TMS(輸配送管理システム)、GPS、IoT、受発注システムなどから得られるデータを連携させ、受注から在庫、倉庫、輸送、納品までを一体として最適化する方向へ進むと考えられます。
例えば、道路渋滞によってトラックの到着が遅れる場合、単に配送ルートを変更するだけではなく、倉庫のピッキング順序やバースの使用予定まで変更する。このようなリアルタイムな全体最適が、AI活用の重要な方向性となります。
■ デジタルツインで「実行する前に検証する」
物流効率化を大きく変える可能性がある技術が「デジタルツイン」です。
これは倉庫や物流ネットワークなどの現実世界をデジタル空間上に再現し、さまざまな条件をシミュレーションする技術です。
「出荷量が30%増えたらどうなるか」「ロボットを増やしたら生産性はどの程度向上するか」「倉庫レイアウトを変更すると作業時間はどう変わるか」といったことを、実際の設備やレイアウトを変更する前に検証できます。
ここにAIを組み合わせれば、膨大な選択肢をシミュレーションしながら、より効率的な物流方法をAIが探索することも可能になります。
■ AIが現実世界を動かす「Physical AI」
もう一つ注目されているのが「Physical AI(フィジカルAI)」です。
従来の物流ロボットは、あらかじめ設定されたルートを走行したり、決められた作業を繰り返したりするものが中心でした。
今後は、AI、カメラ、センサー、ロボティクスの進歩により、周囲の状況を認識しながら、自ら動作を調整するロボットの活用拡大が予想されます。
倉庫内の搬送ロボット、荷役ロボット、さらには自動運転車などがAIと連携すれば、AIが「頭脳」となり、ロボットや車両が「手足」となって物流を動かすという姿も現実味を増していきます。
■ 「一社の最適化」から「物流全体の最適化」へ
AI活用が進むことで、物流効率化の対象そのものも変化すると考えられます。
現在は、自社倉庫の作業時間を短縮する、自社トラックの積載率を高めるといった「企業単位の効率化」が中心です。しかし、物流は一社だけで完結するものではありません。
荷主、物流事業者、倉庫、納品先などが必要なデータを安全に共有できれば、AIによって複数企業の荷物や車両、倉庫能力などを組み合わせ、共同輸配送や空き能力の有効活用を高度化できる可能性があります。
つまりAIは、企業内の「部分最適」から、サプライチェーン全体の「全体最適」へ物流を変えていく可能性を持っています。
■ AIが進化しても「人」の役割は重要
一方で、AI技術の進歩を「物流の完全無人化」と捉えるべきではありません。
物流では、突発的なトラブルへの対応、顧客との調整、安全管理、現場改善など、人の経験やコミュニケーションが重要となる業務が数多くあります。
また、AIが物流上の重要な判断に関与するほど、「AIの判断が適切か」「異常時に誰が判断を修正するのか」といったガバナンスやサイバーセキュリティも重要になります。
今後求められるのは、AIにすべてを任せることではなく、「AIが得意なこと」と「人が担うべきこと」を組み合わせることです。
■ 物流DXは「自律的に最適化する物流」へ
これまでの物流DXは、紙をデジタル化する、物流データを可視化する、作業を自動化するといった取組が中心でした。
今後はそこからさらに、
「データを集める」→「AIが予測する」→「AIが最適な方法を考える」→「ロボットやシステムが実行する」→「結果を再びAIが学習する」
という循環へ発展していくことが予想されます。
物流を取り巻く環境が大きく変化する中、重要なのは最新技術を導入すること自体ではありません。まず自社の物流課題を明確にし、その解決に必要なデータ、AI、システム、自動化技術を適切に組み合わせることです。
「人の経験をAIが支援する物流」から、「人とAIが協働し、変化に対応し続ける物流」へ。
AIは今後、物流効率化のための一つのツールから、物流の仕組みそのものを支える重要な基盤へと発展していくことが期待されます。




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